キャヴィアは食べる黒真珠ですよね。
もちろん私キャヴィアについて語る資格ありません。でも、世の中語る資格ないやつほど、語りたがるものでして。
今、辻 静雄著『フランス料理』を開いているのですが。この本によりますと。
昔、NYに、「ル・パヴィヨン」というレストランがあって。店主の名が、アンリ・スーレ。この店こそ世にキャヴィアを流行らせた店ではないかと、言われているんだそうです。
とにかく「ル・パヴィヨン」のキャヴィアは極上だったという。それは実に単純明解なことで。アンリ・スーレは出入りのキャヴィア業者に言ったそうです。
「とりあえず持って来てみたまえ。開けてみてよければ、言い値の通り、払う。」
なるほど。これなら、最上のキャヴィアが揃うはずですよね。
また、これも昔の話なんですが。帝政ロシアのころ。ヴォルガ川には特別のチョウザメが棲んでいらして。それは黄金に輝く腹子を持っていた。ただし、そのゴールデン・キャヴィアは、ロシア皇帝に限って食べることができたんだそうですが。
キャヴィアが出てくる小説に、『権力者たち』が。1962年に、アーサー・ヘイリーが発表した物語。この中に。
「ベルーガ・マロッルソ・キャヴィア……」
これはカナダの、英国総督官邸で出されたキャヴィアのこと。もちろんこれをはじめ、山海の珍味の行列が。
また、こんな描写もあります。
「船長は入港前にふだんのセーターとデニムのズボンから紺のダブルのスーツに……」
うーん。ダブルのスーツ。いいもんですね。
なにかダブルのスーツで。キャヴィアを食べに行きたいものですがねえ。