にこりとニッカボッカ

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にこりは、人が笑う時の形容ですよね。「にこりと笑う」といった風に。もし猫が笑ったとしても、にこりとは申しません。
猫が笑うと考えた人に、ルイス・キャロルがいます。そのために、「チェシャーズ・キャット」の言い方が生まれたわけですから。
にこりともしないで歌を歌った歌手に、東海林太郎がいます。東海林太郎は、ロイド眼鏡に燕尾服姿で、直立不動で、歌った。微動だにしないで、と言いたいところですが、歌を歌っていたわけですから、たぶん喉は震えていたことでしょうが。
この東海林太郎を「お父さん」と呼んだのが、若き日の高峰秀子。高峰秀子著『わたしの渡世日記』に、そのように出ています。
谷崎潤一郎をはじめとして、若き日の高峰秀子を絶賛したお方は少なくありません。『広辞苑』の、新村 出だとか。そしていささか常軌を逸していたのが、東海林太郎。東海林太郎は、高峰秀子を「養子にしたい」。養子がだめなら、せめて同居して欲しい。で、高峰秀子親娘は、東海林太郎家に。そこではまるでお姫様のように待遇であったという。
高峰秀子が女優になったのは、五歳の時。その頃、高峰秀子は鶯谷に住んでいて。一家揃って遠足に。たまたま行ったのが、「松竹蒲田撮影所」。撮影所を見学していたら、たまたま子役面接も日で。そんな気もなく、あれよあれよという間に、子役に抜擢されたんだそうです。その時代の映画監督は、どんな風だったのか。

「ハンチングにニッカボッカというスタイルの、でっぷりと太った野村芳亭監督を先頭に……………。」

『わたしの渡世日記』には、そのように出ています。
「ニッカボッカ」とあるのが、懐かしい。ニッカボッカなのか、ニッカーボッカーズなのかはさておき、もう一度復活してもらいたいものですね。ただ、穿いただけで、こんなににこりとしたくなるトラウザーズは、他にはありませんからね。

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