幽霊は、怖いものですよね。もっとも。
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」
なんてことも言いますからね。なにか心の奥底に恐怖心があると、なにかを見るとそれが幽霊に思えてきて。まあ、そんなこともあるのかも知れませんが。
一方で、怖くない幽霊もありまして。たとえば、「シルヴァー・ゴースト」。いうまでもなく、ロールス・ロイスの車種のひとつ。
そもそもロールス・ロイスは幽霊がお好きで、「ファントム」だとか。これは自動車の初期に、エンジン音が静かなことを誇りとしたから。あの大きなエンジンが、音もなく近づいてくる。そこで、「ゴースト」。では、どうして「シルヴァー・ゴースト」なのか。
「シルヴァー・ゴースト」は、1907年の登場。この時、車体の金属部分が、すべて銀鍍金だったから。
余談ですが、英国、エリザベス女王がお乗りになるロールス・ロイスは、「フライイング・レディ」が、騎士と龍の像に変えられる。純銀製の。
森 遥子の短篇に、『ロールスロイス』があります。
ある少年が駐車場で、「ロールスロイス」に乗っている男と出会う物語。で、少年の持っているライターが百発百中、着くかどうかで、賭けを。もし少年が勝ったなら、「ロールスロイス」は少年のものに。
「着ているものはきわめて上等だ。小指にダイヤ入りの指輪。」
森 遥子は、「ロールスロイス」の男をそんなふうに描写しています。
だいたいにおいて、イギリス人は「幽霊物」がお好きみたいですね。今でも、ロンドンでは「ゴースト・ツアー」があるんだとか。幽霊が出そうな屋敷を観てまわる旅のこと。
それなら、「ゴースト・ストーリー」が流行ったのも、当然でしょう。このゴースト・ストーリーの書き手に、なぜか女の人が多かったようです。たとえば、ブラッドン。メアリー・エリザベス・ブラッドン。
これも一例ですが、1860年に『冷たい抱擁』があります。この中に。
「この指輪は一風変わった指輪で、大きな金色の蛇がしっぽを口にくわえていた。永遠のシンボルである。」
金の、蛇の指環、いいですねえ。これに銀のロールス・ロイスがあれば、いうことなしなのですが………………。