らくだは、駱駝とも書きますよね。もちろん、キャメルのことです。
「キャメル」は戦後間もなく、「ラッキーストライク」と並んで、憧れの煙草の銘柄でもありました。
らくだはまた、以前、高級素材の名前でもあったのです。「らくだのコート」とか。いうまでもなく、らくだの毛を使うから、その名前で呼んだのです。ことに、らくだの喉の毛が最上とされたものです。
らくだは毛が利用されるだけでなく、乗物のひとつでも。馬に乗るように、牛に乗るように、駱駝に乗ったわけです。交通手段として。
1910年代、駱駝に乗った英國人に、ロレンスがいます。人呼んで「アラビアのロレンス」。これは何度か映画にもなっていますから、説明不要でしょう。
本名、トオマス・エドワード・ロレンス。もともとは、考古学者。1888年8月16日。ウエールズに生まれています。ずいぶんと8に関係ある誕生日ですね。二八、十六ですから。まあ、覚えやすい誕生日でしょう。
「親衛らくだ隊三十五騎がそのすべてであった。」
中野好夫著『アラビアのロレンス』には、そのように出ています。
ロレンスはただ、らくだに乗っただけでなく、服装すべてを土地の人に倣った。まるで原住民の恰好で、らくだに乗ったのです。ゲリラ戦のために。
ロレンスは、ある質問に答えて、こんなふうに言っています。
好きな場所、倫敦。
好きな音楽 、 モオツアルト。
好きな作家、 ウイリアム・モリス。
好きな色、 スカレット。
まあ、このあたりは理解できるのですが。
好きな食べ物、 パンと水。
もっとなにか他に言ってよ、とも思うのですが。
らくだが出てくる小説に、『アジャデ』があります。1879年に、ピエール・ロティが発表した物語。
「何頭かの駱駝が駝鳥の羽を頭に飾り、宝石をあしらった金のブロケードでできた大仰な箱を背にのせて…………………。」
また、『アジャデ』には、こんな描写も。
「ブルサで織られる銀色ラメの紗を使ったブラウスからは……………………。」
ラメ l amé はもともとフランス語で、「金属」の意味があります。金属でもあるかのように、きらきら光る素材のこと。
ラメのブラウスを着る勇気は、ありません。せめてらくだに揺られる夢でも見るといたしましょうか。