エルナニは、演劇の題名ですよね。もちろん、フランスの作家、ヴィクトル・ユゴーの作。
『エルナニ』は、1829年10月5日、巴里の「コメディ・フランセーズ」で幕を開けています。この初演を巡っての騒動が、有名な「エルナニ合戦」なのです。
ユゴーはまったく新しい戯曲として『エルナニ』を書いた。でも、古典派の作家たちはこれがお気になさなかった。で、初演の当日、舞台の前で、もうひとつの「演劇」がはじまって。古典派作家と、ロマン派作家とのケンカが。
でも、「エルナニ合戦」のおかげで、ヴィクトル・ユゴーの文名は高められたのですね。
ヴィクトル・ユゴーが師事した人物に、ノディエがいます。やはりフランスの作家、シャルル・ノディエ。シャルル・ノディエは、自宅の暖炉の前で、文学論を語る。これを若いユゴーたちが耳を傾けたわけです。
シャルル・ノディエも一種の奇人で、古書に目がなかった。古書を買って買って、買いまくった人物。少なくとも「狂書家」のひとりではあったでしょう。
でも、シャルル・ノディエは暖炉の前で語るだけでなく、古書を買い漁るだけでなく、幻想小説を書いたお方でもあったのです。
たとえば、シャルル・ノディエが、1822年に発表した『トリルビー』はその一例。これはスコットランドの妖精が主人公となる幻想小説。「トリルビー」は、可愛い男の子の妖精なのです。トリルビーは何を着ているのか。
「小さなタータンチェックの腰布に煙の色の肩かけをはおっては……………………。」
これが少年妖精、トリルビーの衣裳なのです。
フランスでのタータンは、「エコセ」éc oss a is と呼ぶことがあります。「スコットランドの布」の意味です。
まさかノディエがフランスにエコセを流行らせたわけでもないでしょうが。比較的はやい紹介ではあったでしょう。
なにかタータンを身につけて、ユゴーの本を探しに行くとしましょうか。