ファムとフラール

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ファムは、女のことですよね。フランスで。f emm e と書くんだそうです。
ファムがあれば、オムもありまして。古今東西、ファムはオムより偉いということになっております。これはもう、アダムとイヴの昔からそうなんですから、今さら四の五のいっても仕方ありません。
ファムで、フランスで、お偉いお方。たとえば、コレット。作家の、シドニー=ガブリエル・コレット。コレットは、1954年8月2日に世を去っています。八十一歳でありました。
コレットが消えた時、フランス政府は国葬で送ったものです。8月8日のこと。コレットは晩年、パレ・ロワイヤルを見下ろすアパルトマンに住んでいました。そこで、パレ・ロワイヤル公園すべてに、フランス国旗で埋め尽くして、コレットに哀悼の意を捧げたのです。
ファムの、作家に対して国葬。これはコレットが最初で最後ではないでしょうか。コレットは必ずしも謹厳実直、真実一路の人生だったわけでもありません。
代表作のひとつ『青い麦』は中年のファムが少年に戀する物語。あの『青い麦』は、コレット自身がモデルであるという。コレットは自由奔放に生きたファムでもあったのです。
その一方で、フランス国民には人気のあった人物。フランスで、「コル・クロディーヌ」といえば、ファム用のブラウスの丸い襟のこと。これはコレットの第一作、『クロディーヌ』が愛読されたことから生まれたファッション用語なのですね。
コレットが、1933年に発表した小説に、『牝猫』があります。この中に。

「髪もろくにとかさず、首にマフラーを巻きつけた彼の姿には、とり乱した色気のようなものが感じられて…………………。」

「彼」とは若き夫の、アラン。その様子を見ているのが、若き妻の、カミーユ。カミーユはアランの無雑作なマフラーに「色気」を感じたのでしょうか。
マフラーは時にフランスで、「フラール」。英語でいうところの「フラード」であります。もともとは生地の名前ですが、頸巻きのことをも、「フラール」。
さすがにコレットは海千山千、よく視てますね。
フラールをさりげなく巻いて。美しいファムを探しに行くといたしましょうか。

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