サリーナスとサドル・シューズ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

サリーナスという地名がありますよね。アメリカの西海岸、カリフォルニア州に。サリーナスではいちごの栽培が盛んで。サンフランシスコのフルーツ・パーラーでのいちごは、もしかすればサリーナス物かも知れませんよ。
サリーナスはと、下手な説明するより、次の文章を読んで頂くのがはやいでしょう。

「サリーナス盆地は北にある。二つの山脈にはさまれた細長い盆地。中央をサリーナス川がうねうねと北上し、モンテレー湾に注いでいる。」

ジョン・スタインベック著『エデンの東』の第一行であります。いうまでもなく、『エデンの東』は1910年代の、サリーナスを舞台に描かれた小説なのです。
では、スタインベックはなぜ『エデンの東』の背景に、サリーナスを選んだのか。スタインベックがもっともよく知る場所だったから。スタインベックは、
1902年2月27日に、サリーナスで生まれています。
ジョン・スタインベックはサリーナスに生まれただけでなく、長くサリーナスに住み、サリーナスを愛した人物でもあったのです。スタインベックは『エデンの東』のみならず、多くの自作の舞台を、サリーナスに選んでもいます。
『エデンの東』が発表されたのが、1952年。これを原作として後に映画化されたのが、同名の『エデンの東』。映画『エデンの東』で主演のキャルを演じたのが、ジェイムズ・ディーン。ジェイムズ・ディーンにとっての初の主演映画だったのですね。ジェイムズ・ディーンは、『エデンの東』によって世に出た、そう言って間違いないでしょう。
ジョン・スタインベックは真面目で、重い作家という印象があります。が、中には滑稽味たっぷりの物語も書いたいます。たとえば、『ピピン四世三日天下』とか。いや、『ピピン四世の三日天下』は、スタインベックの中で、例外の、吹き出さずにはいられない小説なのです。もし作家名を知らずに読んだなら、誰ひとり、スタインベックとは気づかないでありましょう。1957の発表。
とにかく現代のフランスに、突然、「ピピン四世」を名乗る人物があらわれる話ですから、抱腹絶倒になるのも当然でしょう。この中に。

「彼女はアメリカ旅行に出たが、帰ってきたときには、紺のジーンズに、サドル・オックスフォードをはき、男物のシャツを着ていた。」

「彼女」とはピピン四世の姫である二十歳の、クロチルド嬢という設定になったいます。そのクロチルド姫がアメリカに旅して、サドル・オックスフォードをお履きになって、お帰りになった、と。いかにもアメリカ人のスタインベックが思いつきそうですが。
サドルは、「鞍」。オックスフォード・シューズの甲に、もう一枚の当て革が乗っているスタイルのことですね。
一度、サドル・シューズを履いて、サリーナスにいちごを食べに行きたいものですが。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone