アダムは、旧約聖書に出てきますよね。アダムとイヴのお話。まず、アダム。それからイヴが生まれて。つまり、この地球上の最初のヒトということになります。
それとは別に、アダムは人の名前にもあって。たとえば、アダム・スミス。アダム・スミスは1723年に、スコットランドに生まれた哲学者。哲学者であり、思想家であり、経済学者であったお方。『国富論』はアダム・スミスの代表作でしょう。
そして、アダム・スミス自身、とてもお金持ちだったのです。では、どうしてアダム・スミスはお金持ちだったのか。
ひとつには、1764年頃、若き日のバクルー公爵の家庭教師となっているから。ざっと三年間、バクルー公爵のグランド・ツアーのお供をしています。その時の家庭教師代が、あまりにも多額だったので。
これがいわゆる「グラント・ツアー」の実態で、見栄もあったのでしょうが、莫大な費用をかけたものなのです。
アダムはまた、フランスの服飾雑誌の名前でもあって。『ADAM』。たしか1950年代まではあったという記憶があるのですが。『ADAM』は空前絶後と形容したいほど、格調高い服飾雑誌でありました。少なくとも『ADAM』は記憶に遺しておきたい雑誌であります。
『ADAM』が出てくるミステリに、『連鎖反応』があります。フランスの作家、フレッド・カサックが、1957年に発表した物語。
「まるで「アダム」誌のイラストから抜け出てきたかのようなタイプだ。」
これは、ポーマノワールという青年の様子。そこからポーマノワールの着こなしの説明が。
「ダークスーツをぱりっと着こなし、裾が細くすぼまったズボンは、アンダー・ストラップでもついているみたいにぴんとしていた。」
今はトラウザーズの時代で、ふつうアンクル・ストラップは添えられません。が、十九世紀は主にパンタルーンズの時代。パンタルーンズには多くアンクル・ストラップが付けられたものです。今は昔の話。
まあ、ごくふつうのトラウザーズを穿いて、古い『ADAM』を探しに行くとしましょうか。