フライデーは、金曜日のことですよね。木曜日の次の日。土曜日の前の日。
十三日の金曜日は、鬼門なんだそうですね。でも、それ以外の金曜日はすべて幸運の日と考えれば、愉しくなってきます。
「フライデー」 fr id ay は時に「忠実なる部下」の意味になります。もちろん、『ロビンソン・クルーソー』の物語にはじまっているんですね。
1719年に、英國人、ダニエル・デフォーが発表した読物。今からざっと三百年ほど前の話であります。
ロビンソン・クルーソーは、もちろん無人島でのひとり暮らしの身の上。ところがある日、その無人島で、公開処刑。その、今まさに命を落とすところを、ロビンソン・クルーソーが救う。それで下男とし友人ともする。
その日がたまたま、金曜日だったので、「フライデー」と命名。よく知られた話でもありましょう。
ここで話は変るのですが。むかし、自由ヶ丘に、古本屋があって。ここに「HPM」がたくさん並んでいたので、よく足を向けたものです。
「HPM」は、「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の略なんですが。
この古本屋の名前も忘れ、今は閉店。ただ、今にして思うと、ハードボイルド物の専門店でもあったような気がします。
ここではずいぶんと、HPMを書いました。その中の一冊に、『夜は耳をすますとき』が。それが何十年ぶりかに、ひょっこり出てきました。
ぱらぱらと読んでいますと。頁の間に、金曜日の暦が挟んであります。
1968年7月5日、金曜日の暦、たぶん、卓上暦の一枚かと思われます。
『夜は耳をすますとき』は、エリオット・ウェストの作で、1968年に刊行されています。おそらくこの一枚の暦を栞代りにしたお方は、新刊の時、すぐに買い求めたに違いありません。
それが巡り巡って、私のところに。
『夜は耳をすますとき』の中に。
「ブルーのブレザー・コートの袖についていた機械油………………」。
これは、パブリック・スクールの教師、アイラースの服装。
たぶん、「ブルー・ブレイザー」を指しているのでしょう。さらに想像を逞しくすれば、スリーボタン型の、パッチ・ポケットのスタイルだったのでしょう。
フライデーは。ブルー・ブレイザーを着ての、古本屋歩きの日としましょうか。