ウオッカは、ロシアのスピリッツですよね。と、言ってすぐに気づいたのですが。ウオッカはなにもロシアに限らず、ポーランドでもごく身近な酒になっています。というよりも、ポーランドのウオッカが先なのか、ロシアのウオッカが先なのか。それを巡っての論争もあるほどなんだそうですね。
ウオッカはご存じのように、無色透明。無臭。どうして無臭かと言いますと。炭で念入りに濾過するから。それも白樺の炭ということになっています。白樺の炭で濾過するからこその、ウオッカなんですね。
つまり、白樺の木が簡単に手に入るところでなくては、ウオッカは造れないということになります。ポーランドもロシアも寒いですから、白樺には事欠きません。北の国に行って、白樺に出会って、ウオッカを連想するようなら、かなりのウオッカ好きと言えるでしょう。
ウオッカが出てくる文章に、『耳学問』があります。木山捷平の書いた『耳学問』。これは小説のようでもあり、随筆のようなものでもあるのですが。この中に、スターリンの話が出てきます。
「………スターリンはことのほか御機嫌で、ウオトカをしたたかきこしめし、松岡をモスクワ駅まで見送り、衆人環視の中で松岡を抱擁し……………………。」
時は、昭和十六年。ここでの「松岡」は、当時、外務大臣だった、松岡洋右のことなんですね。
松岡洋右と書いて、「まつおか・ようすけ」と訓みます。これは、「日ソ不可侵条約」を結びに、松岡洋右がロシアを訪れた時の話として。
作家の木山捷平と親しくしていたのが、井伏鱒二。井伏鱒二の随筆に、『木山捷平詩碑』があります。
木山捷平は岡山出身で。岡山、笠間市の、古城山に、「木山捷平詩碑」が建っているとのこと。それというのも、井伏鱒二はその除幕式に出席しているからなんですね。
ウオッカを飲む話が出てくる名随筆に、『貧乏サヴァラン』があります。ウオッカを飲むのは、森 茉莉。森 茉莉著『貧乏サヴァラン』に出ています。
森 茉莉が久々に息子とふたりで食事する場面。さすが粋な店に行きますねえ。渋谷の、
「サモワアル」へ。小体なロシア料理店。東急本店の脇の坂道を登った左手。サモワアル。
今はもうありませんが。ちょっと秘密めいた店でしたね。
息子は森 茉莉に、食前酒としてウオッカを勧めて。ちょっといい話になっています。
森 茉莉著『貧乏サヴァラン』には、『ジュンかヴァンのオトコのコ』と題する随筆も収められています。
「………着ているものはジュンでなければヴァン、ヴァンでなければジュンである。」
そんなふうに書いています。ほんとうに、そんな時代があったのです。たぶん、信じては頂けないかも知れませんが。
今にして思うのはVANは、「基本」だったのです。藝事でいうところの「守」。「守」の次に「破」があって、最後に「離」にたどり着くのです。これを、「守 破 離」と呼ぶのは、ご存じの通り。
「守」を教えてくれたVAN は偉大でありました。
どなたか基本のスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。