アルセエヌは人の名前ですよね。フランスの男の子に多い印象があります。
たとえば、「アルセエヌ・ルパン」だとか。あまりにも有名なので、単に「ルパン」と省略されることも。銀座には「ルパン」という名前のバアもあるほどです。もちろんアルセエヌ・ルパンに因んでのことであります。
アルセエヌ・ルパンの作者は、モオリス・ルブラン。アルセエヌ・ルパンの誕生は、1905年のこと。
1905年、『ジュ・セ・トゥ』誌、7月15日号に掲載された『アルセエヌ・ルパンの逮捕』が、最初。
ところが、よく似た名前の「アルセエヌ・ロパン」というお方がいらしたのです。以前、パリ市長だった人物。
なぜ、ルブランは「アルセエヌ・ルパン」を、主人公の名前に選んだのか。
まず第一にルブランは、自分を純文学の作家だと考えていて、「怪盗小説」を本気で書こうという心境ではなかった。
さらには『アルセエヌ・ルパンの逮捕』が人気になって、続篇を書くとは夢にも思っていなかったからです。
ルブランが、『アルセエヌ・ルパンの逮捕』を書く前の年。つまり、ルブランがちょうど四十歳の時。ある女占い師に会った。その占い師の名前は、マダム・テーブ。マダム・テーブは、ルブランに言った。
「あなたはまもなくフランスで有名な作家になるでしょう。」
これはなにもルブランがマダム・テーブの所に行ったわけではなくて。たまたま劇場で、隣の席に座っての雑談の折に。
ルブランが1935年に発表した物語に、『カリオトロスの復讐』があります。この物語の中に。
「アルパカの上着を着て、よれよれの鼠色の木綿地のズボンをはいているところを見ても………」
これは、ルースランという引退した判事の着こなしとして。
アルパカはもと野生動物の名前。毛質が良いので、珍重されるものです。
1899年の『東京風俗志』にも、「アルッパカ」として出ています。夏のモーニングに最適の生地として。明治の頃のアルパカは盛夏用だったようですね。
1899年は、ルブラン三十五歳。純文学にとりくんでいた頃です。
どなたかアルパカのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。