ガスパールは、曲の題にもありますよね。たとえば、『夜のガスパール』だとか。1908年に、フランスの作曲家、モオリス・ラヴェルが創った曲です。
『夜のガスパール』はあまりにも有名なので、筒井康隆は、『朝のガスパール』という小説を書いているほど。
小説ではありませんが、詩。ラヴェルの『夜のガスパール』は、ベルトランの詩『夜のガスパール』をもとに生まれているのです。
アロイジウス・ベルトランは、フランスの詩人。
1883年に発表された詩が、『夜のガスパール』なので
す。
「友よ、君は覚えているか、コローニュへ行く道の途中、あれは日曜日だった………」
そんなふうにはじまる魅惑的な内容になっています。
ガスパールが出てくる短篇に、『山の宿』があります。
1886年にフランスの作家、ギイ・ド・モオパッサンが発表した物語。
「………あとに残される老ガイドのガスパール・アリが、若いガイドのウルリッヒ・クンジと、山育ちの大きな犬のサムとともに、宿を守ることになっている。」
もちろん冬山での山小屋の話として。モオパッサンの『山の宿』を読んでおりますと、こんな文章も出てきます。
「五時間、登り続けた。かんじきを使って岩場をよじ登り、氷を刻んで足場を作りながら、ただ前進した。」
いなくなったガスパールを、若いクンジが探すために。
「かんじき」は、雪深い場所を歩くための大きな輪の履物のことですね。
「………寄手六千余騎、深雪にかんじきをも懸けず、山路八里を一日に越えて………」
十四世紀の古書『太平記』にも、そのように出てきます。かんじきの古いことが想像できるでしょう。
「健足の飛脚といへども雪途を行は一日二三里に過ず。かんじきにて足自在ならず。」
1836年に発表された『北越雪譜』に、そのように説明されています。鈴木牧之の書いた随筆が、『北越雪譜』なのです。
その時代の越後では、かんじきを履いて雪道を進むことを、「漕ぐ」と言ったとも書いてあります。
どなたかかんじきの機能を持ったスノー・ブーツを作って頂けませんでしょうか。