梨とナンキーン

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梨は、果物のひとつですよね。「ラ・フランス」なども梨の仲間なのでしょう。
梨のことをむかしの日本語で、「ありのみ」と言ったんだそうです。梨は、「無し」を連想させるので、これを嫌って、「ありのみ」。漢字なら、「有実」と書いたらしい。
このありのみがさらに訛って、「ありのめ」とも。

「大坂順慶町・松屋屋町等、常に夜市ある所に専らこれを売る。」

1853年に完成された江戸期の百科事典『森貞漫稿』に、そのように説明されています。
毎年の七月十一日と十二日とに限って、果物を売った。桃と柿と梨とを。この時のかけ声が。🎶 みいろ みいろ………であったという。
桃、柿、梨の三色を「みいろ」と表現したのでしょう。それはともかく、この日に限って、「ありのめ」と呼んだとのことです。

梨が出てくる小説に、『レ・ミゼラブル』があります。もちろん、ヴィクトル・ユゴーの名作。

「ナシやリンゴは、できるだけうまく隠しておきます。」

これはある寄宿生の少女の告白として。
1873年にヴィクトル・ユゴーが完成させた長篇に、『九十三年』があります。いうまでもなく、フランスの1793年を意味しているのですが。この中に。

「そして黄色い南京木綿の短ズボン、白い靴下、上等のネクタイ、ひだのついたレースの胸かざり、銀の留め金のついた短靴といったいでたちだった。」

これは1793年6月28日。パリのパン通りの酒場での様子として。
ここでの「南京木綿」は、「ナンキーン」nankeen のことでしょう。
十八世紀から主に乗馬ズボンの生地として用いられたもの。多くイエローの縞柄であったという。中国の南京から伝えられたと信じられていたので、「ナンキーン」。
どなたかナンキーンでスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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