セルロイドは、プラスチック以前の樹脂ですよね。セルロイド製のオモチャは懐かしいものであります。第一、セルロイドがなくては、ポンポンの球も作れないでしょうし。
セルロイドが完成されたのは、1868年のアメリカだと、考えられています。ハイアット・ブラザーズによって。この時の商標登録名が、「セルロイド」だったのですね。
日本にセルロイドが輸入されたのは、1877年のこと。明治十年のことなんだそうです。国産のセルロイドは、明治三十八年のこととか。
昭和三年頃の日本のセルロイド製品は、世界一の生産高で、多く海外に輸出されたという。昭和三年頃のセルロイド製品の生産高は、六百万円にも達したそうですね。
セルロイドが出てくる随筆に、『丸善と三越』があります。大正九年に、寺田寅彦が発表した文章。
「例えばセルロイドで作ったキューピーなどのてかてかした肌合や、ブリキ細工の汽車や自動車など………」
これは日本橋「三越」での見聞として。その頃の寺田寅彦は、散歩の途中、まず「丸善」に行って、それから「三越」に寄ることが多かったらしい。もちろん「丸善」の話も出てきます。
「どうしてこの洋品部が丸善に寄生あるいは共生しているのかという疑問を出した時にP君はこんな事を云った。」
「書物は精神の外套であり、ネクタイでありブラシであり歯磨きではないか………」
これは「P君」の答えとして。本屋に洋品を置いてあるのは、当たり前だと。
セルロイドが出てくる小説に、『誕生日』があります。1969年に、カルロス・フエンテスが発表した創作。
「がらがら、ビロード製のクマ、セルロイドのボール………」
これは部屋のオモチャを眺めている場面として。
また、『誕生日』には、こんな描写も出てきます。
「まっすぐに切りそろえられた前髪、ブルーの水兵服、胸元に下げた白いホイッスルに………」
ここでの「水兵服」は、たぶん「セイラー・スーツ」のことかと思われます。sailor suit 。
セイラー・カラーのついた、着丈の短い上着とフレアーのあるトラウザーズの組合わせ。
独特のセイラー・カラーは当時流行した弁髪への、汚れ防止。フレアーのズボンは、海に落ちてもすぐにズボンが脱げる配慮として。
どなたか丸善に着て行けるセイラー・スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。