インクと一文字

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インクは、西洋墨のことですよね。日本にも昔から墨があります。一方、西洋にはインクがあったでしょう。
少なくとも古代ロオマの時代には、インクらしきものがあったらしい。それは、「セピア」イカの墨を利用したインクが用いられたそうですね。
ところで、「インク」なのか、「インキ」なのか。英語のink をどのように訓むのかにかかっているのでしょうが。
明治の時代には多く「インキ」。大正時代以降、だんだんと「インク」と呼ばれるようになったんだそうですね。

「親指を抑へにして小口を雨の様に飛ばして見ると、黑い印氣と鼠の鉛筆が、ちら、ちら、ちらと黄色い表紙迄来て留つた。」

夏目漱石が、1907年に発表した『虞美人草』に、そのような一節が出てきます。。
漱石は、「印氣」と書いて、「いんき」のルビを添えています。
また、『虞美人草』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「手を引くときに、自分でカフスの奥を腕迄覗いて見る。やがて脊廣の表隠袋から眞白な手巾を撮み出して丁寧に指頭の油を拭き取った。」

これは「小野さん」の様子として。小野さんは、ハイカラな人だと説明されているのですが。

大正時代にハイカラだったものに、カンカン帽があります。英語でいうところの、「ボーター」。フランス語でいうところの、「カノティエ」。
これを当時の業界用語では、「一文字」。カンカン帽を横から眺めると、一文字に想えたからでしょう。
どなたか大正期の一文字を再現して頂けませんでしょうか。

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