恋文は、ラヴレターのことですよね。昔は、「懸想文」と言ったらしい。想いを懸けた手紙なので、「懸想文」といったのでしょう。
ラヴレターはラヴレターでも、砂に書いたラブレター。1950年代のヒット曲に、『砂に書いたラブレター』があります。
🎶 オン・ナ・デイ・ライク・トゥデイ………
たしか、パット・ブーンが歌っていました。メイプル・シロップを蜂蜜に漬け込んだような甘い声で。
砂に書くか、紙に書くかはさておき。今はラヴレターを書くお方は少ないのではないでしょうか。
ラヴレターの起源は、という自信はありませんが。たぶん中世の求婚と関係しているのでしょう。
当時の男は求婚に際して、自作の詩を詠んだ。愛する乙女に花束を捧げ、詩を朗読して、返事を待った。
この時、乙女は「ウイ」と返事する代わりに、花束の一輪を抜いて、彼の胸に挿した。これがブートニエルのはじまりだと考えられています。
若き日に多くのラヴレターを書いたお方に、フランスの作家で、飛行士の、サン=テグジュペリがいます。今は、『若き日の手紙』として一冊に纏められているのですが。
「リネット、いつかバッハの例の曲を弾いてくれたのに、ぼくはお礼も言わなかった。ぼくはろくにお礼も言えない男だが、あのときはとてもうれしかったのだ。」
1922年の秋、「リネット」に宛てた手紙の一節。この手紙をはじめ、原文は一気に書かれているんだとか。コンマもピリオドもなく。
その代わりというわけではないでしょうが、自作のスケッチが添えられています。絵入りの恋文というわけでしょうか。
「いまは、まっ白なシャツや、オー・デ・コロンや、風呂を夢みている。」
1927年。カサブランカから、巴里のリネットに宛てた手紙には、そのような文章が出てきます。
少なくとも、1920年代のサン=テグジュペリにコロンを使う習慣のあったことが、窺えるでしょう。まあ、フランス人ですからね。
どなたか1920年代のフランスふうコロンを再現して頂けませんでしょうか。