ブルドッグとブルーチャー

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ブルドッグは、犬の種類にありますよね。bulldog
と書いて、「ブルドッグ」と訓むわけです。ブルが「牡牛」のことですから、あえて直訳するなら、「牡牛犬」ということになるのでしょうか。。
英語での「ブルドッグ」は、1500年頃から用いられているんだそうです。中世の英国には、「ブル・バイト」という野蛮この上もないスポーツがありまして。いや、スポーツと言って良いのかどうか、躊躇われてしまうほどなのですが。
要するに犬をけしかけて、牡牛と闘わせる競技。そのブル・バイトのために特別に育てたのが、今のブルドッグの元祖であるという。
ブルドッグが出てくる紀行文に、『満韓ところどころ』があります。明治四十二年に、夏目漱石が発表した随筆です。
この年、夏目漱石は当時の中国を旅して、その折の紀行文が、『満韓ところどころ』であります。漱石はなぜ、旅することになったのか。
その時代に「南満鉄道」という会社がありまして。中村是公が、重役。中村是公は、漱石の親友。それで、一緒に出かけることになったんだとか。

「尤もブルドッグだから両親からして既に普通の顔とは縁の遠い方に違ひない。」

漱石は、そんなふうに書いています。これは旅の船で一緒になった、英国青年が連れている犬。英国青年は二十二歳で、すこぶるつきの美青年。
その後、漱石は「大和ホテル」に宿泊。大和ホテルでもこのブルドッグに会って、漱石はあまりの偶然に驚いています。

「まづ、御椀の蓋を取ると、鶉がゐる。」

漱石は『満韓ところどころ』に、そうも書いています。
「朝食に鶉を食わせる」と言われたので、食堂に行ってみると、鶉づくし御馳走。漱石はお代わりまでしたそうですが。
鶉はほんとうに美味しい鳥です。が、現在の日本では禁鳥になっています。

ブルドッグが出てくる小説に、『フィネガンズ・ウェイク』があります。1939年に、奇才のジェイムズ・ジョイスが発表した難解長篇。

「………燃える泥炭土で朱色に染まったブルドッグブーツの姿で………」

その時代、「ブルドッグブル」というのが、あったんですね。まったくジョイスはいつ読んでも勉強になります。
また、『フィネガンズ・ウェイク』には、こんな文章も出てきます。

「これは可愛い白の編み上げ靴をはいたジニー。」

この「編み上げ靴」の原文は、「ブルーチャーズ」
Bbluchers になっています。
ブルーチャーズはいわゆる「外羽根式の靴」のことです。
どなたか白のブルーチャーズを作って頂けませんでしょうか。

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