コーヒーは、カフェのことですよね。もし漢字で書くなら、珈琲でしょうか。私たちは今、珈琲も飲み、カフェも飲み、またコーヒーをも飲んでいます。
🎶 一杯のコーヒーから………
昔、そんな歌が流行った記憶があります。「コーヒー一杯」なら、誘いやすい。「コーヒー一杯なら、おつきあいもいたしましょう。たしかにそんな感じがあります。
朝に飲み、昼に飲み、夜に飲むコーヒー。もう、すっかり生活の一部になっています。
では、日本人ではじめてコーヒーを飲んだお方は、どなたかなのか。大田南畝。大田南畝は、江戸期の戯作者。戯作者の一方で、幕府の役人でもありました。大田南畝は仕事の都合上、南蛮船の上でコーヒーをふるまわれています。
「焦げ臭くて、味はふるにたえず」
そんな印象を遺しています。
さて、そうなりますと、長崎の出島でしょうか。出島は当時、警戒厳重。一本の石橋があって、お役人が見張りに立っています。そう簡単には出入りができなかったのです。
しかし例外もありまして、丸山町の遊女。遊女はお役人のお調べを受けてから、出島への出入りが許されたんだそうですね。
「お調べ」ですから、その記録が遺っています。たとえば。
「コヲヒ豆 但鉄小箱入り 壱箱」
これは「筑後屋」の、遊女「大和路」が、オランダ人からもらった品物の記録なんですね。
ここからは想像ですが。その時代、すでに遊女はオランダ屋敷でコーヒーの味を知っていたに違いありません。だからこその「コヲヒ豆」なんだと思われます。また、その淹れ方も知っていたのでしょう。当然、「家に帰ってからも飲みたい」。それで「コヲヒ豆」を、頂いたものと思われます。
日本人が日本で飲んだコーヒーの歴史は、長崎の出島にはじまっているのではないでしょうか。
コーヒーが出てくる小説に、『水いらず』があります。フランスの作家、ジャン・ポオル・サルトルが書いた短篇。
「もしボーイを見かけたら、クリーム・コーヒーを一つ注文しといてね。」
これは巴里の「カフェ・ドーム」の店内でのこと。ここでの、「クリーム・コーヒー」は、カフェ・クレエムのことでしょう。濃厚なミルクを添えたコーヒー。ちょっと優雅なコーヒーです。
また、『水いらず』には、こんな描写も出てきます。
「………あれは女の肌とはちがう、まるでコードヴァンみたいだ。」
これは女の眼から見ての、髭を剃ったばかりの男の顔について。
ここでは、女から見た男の服装について本音がたっぷり語られる場面なんですね。たとえば。
「牝牛の革のみごとに堅い靴。」
うーん、たしかに美しいものです。それにしても、良く見てますよね。
どなたかコードヴァンの美事な堅い靴を作って頂けませんでしょうか。