サロンとモレトン

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サロンは、もともと客間のことですよね。salon と書いて「サロン」と訓みます。イタリア語の「サローネ」salone と関係ある言葉なんだそうです。
サロンは今、いろんなところで使われています。たとえば、「美容サロン」だとか。たしかに人が集まる場所ではありますが。

「彼等は電燈の明るいサロンにいつも快活に話し合つてゐました。」

芥川龍之介が、昭和二年に発表した小説『河童』に、そのような一節が出てきます。ここでの「彼等」が河童を指しているのは、言うまでもないでしょう。
この物語の語り手は、ある時、河童と知り合いになる。そんな不思議の話になっています。では、どこで河童と出会うのか。上高地の温泉近くで。

「……僕が河童と云ふものを見たのはこの時が始めてだつたのです。」

そんなふうに書いてあります。ひとりで、ピクニック。食事を終えて、時計を見ていると、河童があらわれて、友達に。
芥川龍之介は、ガリヴァーの物語にヒントを得て、『河童』の筆を執ったと、伝えられています。

サロンが出てくる小説に、『三人組物語』があります。1835年に、オノレ・ド・バルザックが発表した小説です。

「彼女はどこかのサロンに姿を現すたびに、視線を集めた。」

ここでの「彼女」とは、ランジェ公爵夫人のことなのですが。
また、『三人組物語』には、こんな描写も出てきます。

「彼は花模様のついた部屋着をまとい、白いメルトン織りのズボンをはき、足には厚地のスリッパをひっかけた姿で現れた。」

これは「フェラギュス」という男の自宅での様子として。
「白いメルトン織りのズボン」。メルトン。フランスなら、「モレトン」、molleton でしょうか。
英語の「メルトン」melton
は、英国のメルトン・モーブレーに因んだ言葉です。当時のメルトン・モーブレーは有名な狩猟地。ハンティング・ウエアに適した厚手のウール地にはじまっているのです。
どなたか白いモレトンのパンタロンを仕立てて頂けませんでしょうか。

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