ロスチャイルドは、世界の大財閥ですよね。
Rothchild
と書いて、「ロスチャイルド」と訓みます。ただしこれは、英語での訓み方。フランスなら「ロチルド」になります。ドイツ語なら、「ロオトシルト」でしょうか。
ロスチャイルド家繁栄の発端は、十八世紀の、フランクフルトに遡ります。ユダヤ人のアムシェル・モーゼズによって。
余談ですが「ロオトシルト」は、姓名ではなく、家の呼名から出ています。家に赤い表札がかかっていたので。
「ロオトシルト」。赤い表札の意味だったのです。
アムシェル・モーゼズは、当時の両替商人。このアムシェルの息子が、マイヤー・アムシェル。マイヤー・アムシェルこそ後のロスチャイルド家の富の元を築いた人物だと考えられています。
今日、ロオトシルトの富は天文学的数字なのででしょう。しかし、ロオトシルトの富の一滴を味わうことは、不可能ではありません。
「シャトオ・ムートン」や、「シャトオ・ラフィット」がありますから。「シャトオ・ムートン」は、1853年に、ロオトシルト家が手に入れています。
そして、1868年に、「シャトオ・ラフィット」を。今なお正式には「シャトオ・ムートン・ロオトシルト」と呼ばれるのは、そのためなのです。
ロオトシルトの富は銀行からワインに至るまで及んでいるのでしょう。
ロオトシルトが出てくる随筆に、『ローラン彫版店』があります。1979年に、朝吹登水子が発表した『パリの男たち』に収められている随筆。
「ギイ・ド・ロスチャイルド男爵来る何月何日何時に某猟地にお招き致したくと刷ったのや」
これは何の話なのか。「ロオラン」の店内の見本を、朝吹登水子が眺めている場面として。「ロオラン」は、パリ、サントノーレの高級文房具店。文房具店なのですが、案内状や名刺などの印刷をも引き受けてくれる店。ことに銅版印刷では右に出る者がいないとまで言われている店なんだそうです。
「名刺をもらった途端に右手の親指の裏で名刺の表面をなでて銅版か普通か調べる人が時々いる。」
朝吹登水子は、そんなふうにも書いています。
銅版印刷での名刺は、活字の表面が少し盛り上がる。その凹凸をさわることで、銅版印刷の名刺であることが解るわけですね。
ヨオロッパの上流階級では名刺にもおしゃれがあるのでしょう。
どなたか銅版印刷の名刺を作って頂けませんでしょうか。