鱧とハット

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鱧は、魚の一種ですよね。鱧は、「食む」と関係があるんだとか。。昔から食用にされてきた魚なのでしょう。
鱧はちょっと穴子と似ていなくもありません。淡白でその奥に豊かな慈味が隠されている点で。
鱧は、「つの字」の魚。まな板の上に置いて「つの字」になるような鱧が味が佳いとされます。
あえて鱧の欠点を探すなら、骨。鱧は小骨の多い魚なので。鱧を美味しく食べるには、骨切り欠かせません。
これを「はもの骨切り」というわけですね。一寸に、二十四の包丁を入れるんだそうですね。
そんなこともあってか、鱧は京都ということになっているんでしょう。もっともその鱧自体は、瀬戸内物が使われるんだそうですが。
鱧と梅。鱧はなぜか梅と相性が良いとされます。なるほど、鱧を梅肉で食べのるは、乙な味わいのものです。

鱧が出てくる映画に、『秋刀魚の味』があります。1962年の、小津安二郎作品。小津安二郎の遺作。
『秋刀魚の味』の中に、クラス会の場面が。銀座の料理屋でのクラス会。その時のお吸い物に、鱧が。東野英治郎は、恩師の役。で、「これは何ですか?」と、かつての教え子の、中村伸郎に聞くんですね。
これはほんの一例ですが、小津安二郎の映画には、食事の場面が少なくありません。実生活での小津安二郎は、シュウマイがお好きだったらしい。それも銀座のあ「東興園」のシュウマイが。
「東興園」は銀座裏通りの気取らない店でしたが、シュウマイが美味しかった。今、「東興園」は消えてしまいましたが。

小津安二郎といえば、『東京物語』でしょうか。昭和二十八年の映画。この時の笠
智衆は、四十九歳。それが七十の「周吉」を演じなくてはならない。熱海の防波堤で。この時の「周吉」の背に座布団をいれて「老い」を演じたんだそうですね。
また、ある時の小津の演技指導で。原 節子に対して。銚子を持つ角度。
「原さん、銚子傾けすぎ。まだ一杯しか注いでいないんだよ」
うーん、小津ならではのリアリズムでしょうか。
『東京物語』演出中の小津安二郎は、ソフト帽をかぶっています。昭和五年の写真でも、ソフト・ハットをかぶっています。
それも極上のソフトを。小津安二郎といえば「ピケ帽」が有名なのですが。しかし小津安二郎が常に最上のソフトを愛していたこともまた、間違いないことです。
ソフト・ハットは一目でその良し悪しがすぐに分かるものですから。

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