シルクとジビュス

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シルクは、絹のことですよね。日本で「絹」というところを、英語では「シルク」s i lk となるのでしょう。
フランスなら「ソワ」、イタリアなら「セッタ」でしょうか。
絹糸は例外なく蚕から生まれます。ですから絹は貴重な動物性繊維であるわけですね。むかしの日本人は絹を尊んで、「お蚕」呼んだもの。
今に、「お蚕ぐるみ」の言葉が遺っているではありませんか。
小さい時から絹の服ばかり着せられて育った人。それを「お蚕ぐるみ」と言ったものです。大事に大事に育てられたことを。
そうかと思えば、「絹裂くよう」。これは女の人の甲高い声への形容。
もしそれが平織の薄い絹地なら、両手で簡単に裂くこともできます。ただしその時、絹地は悲鳴をあげます。それに似た声のことを、「絹裂くよう」。
古来から絹がいかに身近な存在だったかを、窺わせるに充分のものでしょう。

「低いながら帛を裂くやうに癇癖らしい調子になつてゐた。」

有島武郎が大正八年に発表した『或る女』の、一節。主人公、「葉子」の話し方について。
有島武郎は、「帛」と書いて「きぬ」と訓ませています。
シルクが出てくる小説に、『犯罪王 カームジン』があります。英国の、ジェラルド・カーシュが書いた連作短篇。1930年代の発表。ユウモア 小説でも。

「………信心深い男がロザリオにするように、黒いシルクのチョッキを大事そうになでた。」

これは主人公のカームジンが、ある洒落者を自宅に案内した時の様子。
当時のカームジンは、上着を十七着、トラウザーズを三十二本、ウエイストコートを四十着持っていたとも説明されているのですが。
ユウモア 小説『犯罪王 カームジン』には、若い頃の彼がいかに洒落者だったかを説く場面も出てきます。そのごく一部として。

「………帽子はジブス以上に腕のいいシャールに作らせた。」

ここでの「ジブス」は、ジビュス G ib us のことかと思われます。
ジビュス g ib us はイギリスでいう「オペラ・ハット」のことです。1830年頃に、
巴里の帽子屋「ジビュス」が考案したので、その名前があります。もちろん折畳式の
トップ・ハットのこと。
私は知りませんでしたが、少なくとも1938年頃までは「ジビュス」の店があったのでしょうね。

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