ソクラテスとサヴィル・ロウ

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ソクラテスは有名ですよね。古代ギリシアの哲学者。とても偉い学者なんですが、ご自分の著作はない。今に遺されている名言集は、すべて弟子たちが、後に書き継いだものなんですね。
その代わりと言っていいのか。ソクラテスは語るのがお好きで、またお上手だったらしい。弟子たちはみんなこのソクラテスの話を聴くために集まってきたんだとか。
ソクラテスがいつ生まれたのか、よく分かっていない。だいたい紀元前469年頃の生まれだろうと、考えられています。これはソクラテスが紀元前399年4月27日に、七十歳で世を去ったことから、逆算しているのでしょう。
ソクラテスはワインを飲みつつ、語った。これを「シンポジオン」と言ったんですね。ソクラテスはワインに強かった。弟子たちが眠ったあとも、プラトンを相手に徹夜で語り明かしたという。
もっとも古代ギリシアのワインは、ふつう水割りで飲んだ。混酒器というのがあって。ここにワインと水とを入れて、そこから杯に移して飲んだ。
水割りではないワインが出てくるミステリに、『シングル・アンド・シングル』が。ジョン・ル・カレが、1999年に発表した物語。この中に。

「彼にはシャトー・ディケムだ。それにフォアグラ。ラムはシャトー・パーマーで召し上がっていただこう。」

これはイギリスの、「シングル・アンド・シングル」社の経営責任者、タイガー・シングルが、客の、エヴゲニー・オルロフに対しての科白。これがちょっとしたランチなんですからね。
シャトー・ディケムは、ご存じ最高級の甘口ワイン。これにフォアグラを合わせるのは、贅沢で、粋なことでしょうね。また、こんな描写も。

「着ているスーツは、御曹司が正式にジュニア・パートナーに就任するために<ヘイワード>で仕立てたうちのひとつで……」

これは主人公の、オリヴァーの着ているスリーピース・スーツ。「ヘイワード」はもちろん、実在のテイラー。たぶん、「ダグラス・ヘイワード」のことでしょう。かのレックス・ハリスンや、デヴィッド・ニーヴンが贔屓にした名店。
サヴィル・ロウではありませんが。なにかスリーピース・スーツを着て。ソクラテス名言集を探しに行くとしましょうか。

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