人間と外套

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人間とは何か。ふだん、あんまり考えませんよね。
人間を猛獣にたとえた人がいるんだとか。
「人間はもっとも怖ろしい猛獣であり、しかも同じ種族を組織的に餌食にする唯一の猛獣である。」
これは哲学者、ウイリアム・ジェイムズの言葉なんだそうです。ウイリアム・ジェイムズは、あのヘンリー・ジェイムズのひとつ違いのお兄さんなんですね。
ウイリアム・ジェイムズと、ヘンリー・ジェイムズのお父さんが、ヘンリー・ジェイムズ。アイルランド系のアメリカ人。お父さんは宗教哲学者でしたから、ウイリアム・ジェイムズが哲学者になったのも、当然かも知れませんが。
ウイリアム・ジェイムズの教えを受けたひとりに、ガートルート・スタインがいたという。その頃、ウイリアム・ジェイムズはラドクリフ大学で、哲学教授だったから。その生徒のなかに、ガートルート・スタインが。ラドクリフはもちろん、名門校ですよね。
ガートルート・スタインがヘミングウェイに与えた影響は、よく知られているところでしょう。そのガートルート・スタインがはじめて小説を書いたのが、1909年頃のこと。『三人の女』がそれです。
ガートルートは書き上げた『三人の女』を持って、出版社に。『三人の女』に目を通した編集者は、こう言ったそうです。
「貴女は、正規に、英語を学んだことがあるのですか?」
それくらいに、ガートルート・スタインの文章が独特だったんでしょうね。

「ジェフはメランクタが持っている部屋に入って行き、帽子と防寒コートをぬぎ、それから椅子を引き寄せて暖炉のそばに坐った。」

これは『三人の女』の中の、「メランクタ」に出てくる一文。「防寒コート」、どんなスタイルだったのか。
少しでもまっとうな外套を着て。少しでもまっとうな人間として、生きたものですが。

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