ビスケットとキャスケット

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ビスケットは紅茶に合いますよね。ビスケットを食べて、紅茶を飲んで。紅茶を飲んで、ビスケットを食べて。これでもう、キリがなくなってしまう。
ビスケットは昔、「びすこうと」と言ったんだそうですね。これはオランダ語の「ベスコート」 beschuit から来ているんでしょう。昔とは、十六世紀のこと。所は、長崎。その頃の長崎では「びすこうと」を作っていた。
長崎はその時代から異国の船が入ってくる港。船が入ってくるからにはやがて本国に帰るわけで。その船内食に「びすこうと」が必要だった。「びすこうと」なら、保存が効いたからなんですね。
ビスケットを偏愛したおひとりに、森 茉莉がいます。

「ビスケットには固さと、軽さと適度な薄さが ( 中略 ) ポツポツの穴は深く、綺麗に、カッキリ開いていなくてはならないのである。」

森 茉莉著『私の美の世界』には、そんなふうに書いてあります。森 茉莉の理想のビスケットについてえんえんと述べられているんですね。これ、もしかしたらハントリーパーマのビスケットを念頭に置いているんでしょうか。
ビスケットが出てくる小説に、『ダブリンの市民』があります。もちろん、ジェイムズ・ジョイスの作。

「ーーなんとねえ……そいつはビスケットものだぜ。」

「ビスケットもの」とは俗語で、「一等賞」の意味があるんだとか。ジェイムズ・ジョイスが出てくる小説に、『過ぎ去りし日々』が。1994年に、ロバート・B・パーカーが発表した物語。

「リフィ河畔を歩きながら考えたのだ」

これは物語の主人公、クリス・シェリダンの科白なんですね。場所がダブリンだから、ジョイスを想うのも、当然でしょう。また、こんな描写も。

「ツイードの鳥打ち帽に黒いレインコートを着た……」

これはフィニィーという男の着こなし。ただし、1920年のダブリンが背景なんですが。これはたぶん、キャスケットでしょうね。
キャスケットを被って、美味しいビスケットを探しに行くとしましょうか。

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