羅生門とフェドーラ

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『羅生門』という小説がありますよね。芥川龍之介の短篇。
物語の背景は、平安時代。場所は京都、羅生門。主人公の名前はありません。ただ、「下人」とだけ書かれています。
『羅生門は大正四年九月に書かれているんだとか。大正四年の芥川龍之介は、東京帝国大学に籍があったころ。芥川龍之介、二十歳くらい。
芥川龍之介は『羅生門』の前に、『ひょっとこ』を書いています。が、『羅生門』が初期作品であるのは、間違いないでしょう。ところで『羅生門』はどんなふうにはじまるのか。

「或る日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待つてゐた。」

では、最後の一行はどうなのか。

「下人の行方は、誰も知らない。」

ところがはじめの発表ではもっと長い文になっています。芥川は何度も手を入れて、「……誰も知らない。」に至っているのです。この終章を読みくらべてみると。
「下人の行方は、誰も知らない。」が、余韻の多い感じがします。
『羅生門』が発表された大正四年は、1915年でもあります。
1915年に大西洋に沈んだのが、ルシタニア号。もちろん英国の豪華客船。1915年は第一次大戦中。敵艦の魚雷に沈められたのです。
ロバート・ライス著『ルシタニアの夜』は、このルシタニア号に因んでの物語。2003年の発表。この中に。

「茶色のスーツにフェドラ帽。しゃれた革靴。」

これはたぶん「フェドーラ」 fedora のことなんでしょう。ブリムのカーヴが美しいソフト帽ですよね。
さて、フェドーラを被って。古い『羅生門』を探しに行くとしましょうか。

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