美人と夜会服

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美人についての話。これはもう罪がなくて、いいですね。
美人、佳人、麗人。もの言わぬ花とも。
美人で、イギリスで、と言いますと。リリー・ラントリーを忘れることはできないでしょうね。美人のなかの、美人。英国、ジャージー島のお生まれなんで、人呼んで「ジャージー・リリー」。かのエドワード七世がぞっこんだったとも。
リリー・ラントリーが出てくる小説に、『変り種』が。1931年に、サマセット・モオムが発表した短篇。
登場人物は、ファーディ・ラーベンシュタイン。時代背景は、1880年頃に置かれています。1880年。たぶんリリー・ラントリーがもっともお美しい時代であったでしょうね。
ある時、ある所で。主人公のファーディは、リリー・ラントリーとお近づきになる。で、ふっとリリーに会わせた女性を思いつく。もちろん小説の中での話ですよ。
主人公は、リリーを、サマセット公爵夫人に会わせたい、と。サマセット公爵夫人は美貌の持ち主。若い頃、美人コンクールで優勝したほど。
それでファーディは、リリー・ラントリーをともなって馬車で、サマセット公爵夫人の館へ。
サマセット公爵は、リリーに会う。しばし歓談の後に、ふたたび馬車の人となる。
屋敷に帰ったリリーはディナーの時間になっても、食堂に降りてこない。そっと部屋をのぞいてみると、絶世の美女は涙を流していた。
「時の流れのきびしさに泣いていた」。皮肉屋、モオムはそんなふうに語るのですが。
それはともかく、ファーディ・ラーベンシュタインの着こなしについても。

「ワイシャツの胸あたりにいくつもの大きな黒真珠をつけ、指にはプラチナとサファイアの指輪をはめていた。」

これは「夜会服」の説明。夜会服は、イヴニング。それと言うのも。ファーディはどうしても、ディナー・ジャケットは着る気にはなれない、と説明されているので。
これもまあ、時の流れではありますが。
さて、夜会服を着て。美人に会いたいものですが。

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