敦子とローデン

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敦子という名前のお方も多いんでしょうね。
敦子で、随筆家で、ということなら、須賀敦子でしょうか。須賀敦子といえばなぜか、向田邦子で。向田邦子といえば、米原万里で。連想が続いてしまいます。
須賀敦子。向田邦子。米原万里。どうして女の人に、随筆の名手が多いのか。もちろん、まだまだ他にもいらっしゃるんでしょうが。
須賀、向田、米原。この三人に共通するのは。「美味いもの好き」ということです。それはこの三方の文章を読めば、すぐに分かるでしょう。
向田邦子は好きが昂じて「ままや」という食事屋を開いたほど。米原万里の妹君は、料理研究家であらせられた。
須賀敦子著『コルシア書店の仲間たち』を読んでいると。

「パセリとアンチョビの炒めごはんレシピや、リゾットのベースには、ワインでなく、ドライ・シェリーをいれるといい………」。

と、あったりして。「なるほど」と、よだれを垂らすこと、少なくありません。美味い食事と「美味い随筆」はなにか、関係があるのかも知れませんね。
須賀敦子著『ヴェネツィアの宿』には。

「深い緑のローデン・コートの紳士がまず身軽にひょいと降り立ち………」。

これはミラノ中央駅での光景なんですね。
ローデン loden はもともと生地の名前。オーストリアの小さな村、ローデンで手織りにされた布。十六世紀に遡るというから、古い。当時は未脱脂羊毛で、これが水滴を弾いてくれたのです。本来は自給自足野良着。今なお直線裁ちに近いのもそのためでしょう。

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