ブラウンと靴下

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ブラウンはそれほど珍しくはない姓みたいですね。
たとえば、カール・F・ブラウン。ドイツの物理学者。1897年に、ブラウン菅を発明しています。それから「ブラウン」という名前のシェイヴァーがあります。1921年に、マックス・ブラウンがはじめた会社なんだそうです。
ミステリのほうでのブラウンは、「ブラウン神父」でしょうか。チェスタートンが生んだ名探偵。ごく平凡に見えるブラウン神父が鮮やかな推理をするところに、妙味があります。
ギルバート・キース・チェスタートンは、二十世紀はじめの英国の文人。かのバーナード・ショオとは良き論戦相手だったという。
昔、『イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ』というのがあって、週刊誌。チェスタートンは1905年から毎週、寄稿。これが1930年までの二十五年間続いた。そのうちにお休みになったのは、二回だけだったそうです。
そのチェスタートンが「ブラウン神父物」を書くようになったのは、1911年のこと。『ブラウン神父の童心』がそれです。これが好評となって、『ブラウン神父の知恵』などのシリーズになるのです。
『ブラウン神父の童心』と同じ年に刊行されたのが、『門』。もちろん、夏目漱石。『門』の中に。

「御米は其晩夫の爲に置炬燵へ火をいれて、スコッチの靴下と縞羅紗の洋袴を乾かした。」

宗助はトゥイードの靴下を履いていたのでしょう。つまり生地に織るのではなくて、トゥイードの糸で編んだ靴下が明治の末にはあったのでしょうね。

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