『ニュウヨーカー』は良心的な雑誌ですよね。そもそもは「ニュウヨーク人」のための週刊誌としてはじまっているんだそうです。
『ニュウヨーカー』といいながら、これほど広い地域の人びとに愛されている雑誌も珍しいのではないでしょうか。
『ニュウヨーカー』の創刊は、1925年。今から九十年以上も前のことになります。1925年2月17日のことと、記録されています。もっとも正しくは、『ザ・ニューヨーカー』。これを創刊したのが、ハロルド・ロス。ハロルド・ロスは長く記憶にとどめておきたい名編集者です。
『ザ・ニューヨーカー』の名前は、ジョン・ピーター・トゥーイという人物の命名であったという。創刊号のページ数、36ページ。そのうち広告ページが、6ページ。
この創刊号の表紙は、まさにニューヨーカーの紳士の絵になっていたのです。この絵を描いたのが、リー・アーヴィング。トップ・ハットを被った紳士が、片眼鏡で蝶を眺めている場面。これほど有名になった表紙もまた、珍しい。
あまりに有名な絵なので、紳士にもちゃんと名前がついています。「ユースタス・ティリー」が、紳士の名前なのです。このユースタス・ティリーのモデルは、フランク・クラウニンシールド。アメリカ、最後の紳士と呼ばれた人物。フランク・クラウニンシールドは、『ヴァニティ・フェア』の編集者でもあった人物。
『ザ・ニューヨーカー』に寄稿したのが、ジュンパ・ラヒリ。1967年。ロンドンに生まれた女性作家。
たとえば、『年の暮れ』。これも2007年の『ザ・ニューヨーカー』に掲載されています。この中に。
「この父が、つい何週間か前に、絹のクルタに身を包み、花婿の帽子をかぶっていたのかと思う。」
これは、娘から眺めての、父。インド系なので、クルタ。クルタは全体にゆったりした、丈長のシャツのことですよね。