樹とひと口に言いましても、その種類は多いですよね。
「聖樹」という考え方はいろんな国にあるようです。樹には聖なる力がこもっていると、考えるわけです。
たとえばインドでは菩提樹が「聖樹」とされます。その昔、釈迦が悟りを開いたのも、菩提樹の下だったという伝説があります。
釈迦が登場する物語に、『蜘蛛の糸』があります。もちろん、芥川龍之介の作。大正七年、『赤い鳥』の創刊号に掲載されたものです。芥川龍之介がはじめて書いた童話でもあります。お釈迦様が、あるひとりの男を救おうとする話ですね。
『赤い鳥』は鈴木三重吉の提唱ではじまった子ども向けの童話雑誌。この鈴木三重吉の考えに賛同したひとりが、芥川龍之介だったのです。
芥川龍之介は大正九年にも、『杜子春』を『赤い鳥』に寄稿しています。『杜子春』は、中国の古い話をもとにした、芥川龍之介の創作なのです。この中に。
「錦を縫わせるやら、香木の車をつくらせるやら、象牙の椅子をあつらえるやら………」
杜子春が一夜にして大金持ちになって、贅沢の限りを尽くす場面の描写なんですね。「錦」 ( にしき ) は英語でいうところの、「ブロケード」。金糸銀糸を使った紋織のこと。
蕗谷虹児の『花嫁人形』に。
🎵 金襴緞子の帯締めながら………
とありますが、あの「金襴」もまた、錦の一種なのです。