蒟醤とギンガム

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蒟醤は、美しい容器ですよね。ただ美しいというだけでなく、繊細に優美、しかも異国趣味を感じさせます。
蒟醤は、漆塗りの一種。そして多くは、竹材。まず竹で編んで器を作り、漆で塗り固める。塗り固めたなら、その表面に細微な文様を、彫る。彫った上から蒟醤の汁を流し入れて、さらに漆を塗って。あの蒟醤に特徴的な紅の色は、蒟醤の色なのですね。
つまり、「キンマ」は植物の名前であり、それを使った漆芸の名称でもあるのです。蒟醤の技法はそもそもタイにはじまり、ビルマに伝えられたと、考えられています。
この蒟醤が日本に伝えられたのは、江戸期。ことに、四国、讃岐、高松藩で発達。それというのも、時の藩主がきんに目をとめて、奨励。玉楮象谷に命じて、蒟醤作りを。今でも、高松では、蒟醤の技法が遺されています。現在での蒟醤は、アジア諸国よりも質においては日本優っているとも。
蒟醤の話が出てくる小説に、『浮雲』があります。林芙美子の『浮雲』。林芙美子の代表作とも言えるものです。林芙美子は、昭和十七年に、アジアへ。仏印、シンガポール、ボルネオなどに、役八カ月の旅を。その時の見聞を小説にしたのが、『浮雲』。

「檳榔と蒟醤については、安南に美しい傳説がのこつている。」

「安南」が今のヴェトナムであるのは、いうまでもないでしょう。もっとも「傳説」についてはそれほど詳しくは書かれてはいませんが。また、こんな描写も。

「ゆき子の赤縞のギンガムのスカートが、昨日のことのように………」。

この「ゆき子」が物語の女性主人公。おそらくは林芙美子の分身かと思われるのですが。
それはともかく、「ギンガム」 gingham はスカート専用の生地ではありません。多くは大胆な格子柄で、上部な綿布。フランスでは、「ガンガン」 guingan とも。
ギンガムのシャツ、着てみたいものですね。

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