ラヴとズック

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ラヴ love は、「愛」のことですよね。あるいはまた、「恋」であり、「恋愛」であります。
題に「ラヴ」のつく歌は少なくありません。ただ、『ラヴ』という曲だってあるくらいですからね。たしか、ナット・キング・コールが歌っていましたっけ。
『ラヴァー・カムバック・トゥ・ミイ』だとか。『砂に書いたラヴ・レター』だとか。『フォーリンギン・ウイズ・ラヴ』だとか。まあ、歌は愛とか恋とかを謳うためのものでもありますから、当然のことでもあるんでしょうね。
そんな中のひとつに、『ラヴ・フォー・セール』があります。コール・ポーターの作詞、作曲。1930年の歌。
『ラヴ・フォー・セール』は、もともとミュージカルのなかの一曲。1930年の『ザ・ニューヨーカー』で、歌われて、好評。1930年12月8日に。「ブロードウェイ劇場」で。出演は、ホープ・ウイリアムズ、ジミー・デュランテ、リュー・クレイトンなど。168回の拍手喝采を受けています。
でも、1931年のラジオ放送では、『ラヴ・フォー・セール』を流すことはできなかった。ミュージカルではよろしいけれど、ラジオではよろしくない。このあたりにも1930年代のアメリカならではの良識があったのでしょうね。
ちょっとこれに似て。劇場上演での『欲望という名の電車』でのせりふは許されて、映画での『欲望という名の電車』の科白は許されない。そんなこともあったようですが。
それはともかく、1930年に発表されたミステリに、『赤ワイン』があります。ローレンス・G・ブロックの名作。原題もまた、『レッド・ワイン』。これは小説として発表されて後、ラジオ・ドラマにもなっています。赤ワインの出てくるミステリとしては、秀逸。この中に。

「ジャワの瓶でなまぬるい水を浴び、コーヒーを一杯味わい、白いズック地の上着のボタンを首までかけよう。」

これは物語のはじめの部分。とある南国の土地で、監督官を勤めるケルト氏のひとり言。ケルト氏は、「ズック」の上着を着ているわけです。ズックは「ダック」で、「キャンバス」で、色はたぶん白でしょうね。
赤ワインもいいけれど、白いキャンバスのジャケット、着てみたいですね。もちろん、「首までボタンをかけて」。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone