チーズとチョッキ

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チーズは美味しいものですよね。チーズであれば、いつ、どんな時にでも、食べることができます。
もっともフランスでのチーズは、食後ということが多いようですが。

「チーズのないデザートは片目のない美人である。」

かのブリア・サヴァランの名著『美味礼讃』にはそんな言葉が出ています。日本語の中で似たような表現を探すなら、「点睛を欠く」に近いのでしょうか。まあ、それはともかく美食にチーズは欠かせないもののようですね。
チーズはフランスでは「フロマージュ」。でも、フロマージュはフランスに限ったことではありません。「乳」のあるところにはたいていなんらかのチーズがあるようですね。もちろん、スイスにもチーズが。
スイスを代表するチーズに、「グリュイエール」があります。牛の乳で造る、硬いタイプのチーズ。もともとは大きくて、丸い形をしています。12世紀の、スイス、グリュイエール村の修道院ではじまったと考えられています。
ジェイムズ・ビアード著『パンの本』には、チーズ・ブレッドの作り方が紹介されています。パンの中に、グリュイエール・チーズを練りこんだパンのことです。グリュイエール・チーズの代わりに、エメンタール・チーズでもよろしいと書いているのですが。
『パンの本』は、ほんとうにすぐにでも、焼き立てのパンが食べたくなってくる本なのです。この中には、「ブリオッシュ風のパン」の作り方も、説明されています。これはどうもビアードさんの独創であるらしい。ブリオッシュの生地を食パン型に入れて焼くものなんだとか。
ブリオッシュがお好きなのが、ポアロ。名探偵、エルキュール・ポアロ。

「チョコレートに添えられているのはブリオッシュだ。」

アガサ・クリスティー著『第三の女』には、そんな風に書いてあります。もちろん、ポアロのいつもの朝食風景なんですね。「チョコレート」は、日本でいうココアのこと。ポアロはブリオッシュを食べながら、ココアを飲むのを好んだようですね。また、『第三の女』には、こんな描写も。

「赤いベルベットのチョッキにごく凝ったジャケットを着こんだ若い男がすわっているではないか。」

これは、デイビッド・ベイカーという男の着こなし。もちろん単なる偶然ですが。ベイカーは「パン屋」の意味にもなりますが。
真紅のヴェルヴェットのチョッキで。焼き立てのパンを買いに行きたいものですね。

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