マンドリンとタスカン

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マンドリンは、なんとも美しい音色を奏でるものですよね。朝、マンドリンの音楽で目を覚ますのは、ちょっとした桃源郷でしょうね。
マンドリンの音楽で目を覚ます話が、『コレリ大尉のマンドリン』に出てきます。 『コレリ大尉のマンドリン』は、1995年に、ルイ・ド・ベル二エールが発表した小説です。「ルイ・ド・ベル二エール」という名前から、フランス人をおもうかも知れません。が、ご本人はれっきとした英国人。1954年に、ロンドンに生まれて、今もイギリスに住んでいます。はるか遠い昔の先祖がフランス系だったものと思われます。
『コレリ大尉のマンドリン』は、その後「二十世紀を代表する百冊」にも選ばれて。そのことと関係があるのか、どうか。軽く二百万部を突破したベストセラーでもあります。
『コレリ大尉のマンドリン』は、ギリシアを背景にした物語。それも、「ケファロニア島」という小さな島が舞台なのです。ここにムラでたったひとりの医師、イアンニスが住んでいて。イアンニス医師の娘が、ペラギア。そしてこのケファロニア島に、イタリアの、アントニオ・コレリ大尉がやって来て………。かなり読みごたえのある長篇です。
コレリ大尉の弾くマンドリンで目を覚ましたのは、ペラギアだったのです。そのマンドリンは。

「ボディの縁は台形に切った玉虫色のアコヤ貝で縁取りされ、黒い受け座はクレマチスの花のかたちをし…………」。

そんな風に、えんえんと説明される。かなり凝ったマンドリンなのでしょうね。コレリ大尉はそれ以前はヴァイオリンを弾いていて、ヴァイオリンからマンドリンにはすぐに移れるんだとか。とにかく、マンドリンについては、ここで詳しく語られるのです。 もしマンドリンにご興味おありなら、『コレリ大尉のマンドリン』を読むに限ります。
話は飛びますが、谷崎潤一郎もマンドリンに興味を持っていたようですね。小説の中にも、マンドリンが登場します。また、『マンドリンを弾く男』という戯曲も書いています。戯曲ではありませんが、『友田と松永の話』。これを読んでいると。

「リンネルの背廣に英國製のタスカンの中折れを被って、何から何まで眞白づくめの服装をした…………」。

これは、松永から見ての、友田の着こなし。「タスカン」は、ストロー・ハットの一種。いた、トスカーナ地方の意味。昔、イタリア、トスカーナの麦藁が珍重されたので、その名前があります。
仮に「タスカン」でなくとも。純白のストロー・ハットを被りたいものですね。

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