カステラは、美味しいものですよね。カステラはむかし、「南蛮菓子」とも呼ばれたらしい。
南蛮、つまりポルトガルやスペインから伝えられた菓子を、日本式に完成させたのが、今のカステラなんでしょう。
カステラがお好きだったのが、北原白秋。
カステラの黄なるやはらみ
新しき
味ひもよし春の暮れゆく
そんな歌を遺していますから。北原白秋は福岡、柳川の生まれですから、長崎はみじかに感じていたのでしょう。
東京生まれで長崎に旅した作家が、芥川龍之介。大正八年のことです。また、大正十一年にも長崎を、再訪。この時に。
カステラの 焼けの遅さよ 桐の花
そんな一句を詠んでいます。「桐の花」ということは、春なのでしょう。もう少し具体的には、五月。芥川龍之介は、カステラが焼けるのを待って、食べたものと思われます。そしてまた芥川龍之介は、カステラを手で食べたんだそうですね。焼き立てを、手で割って。そのほうが美味いから、と。
カステラが出てくる小説に、『脂肪の塊』があります。もっともP・G・ウッドハウスのユウモア小説なんですが。
「衆望を集めるカステラ君のひとりが委員長に就任した。」
つまり友人の愛称になっています。また、P・G・ウッドハウスには、『アルジーにお任せ』の短篇もあって。1959年の発表。この中に。
「ビンゴの金のカフスが昨夜忽然と消えてしまった事件について……………」
ここでの「カフス」は、たぶんカフ・リンクスのことなんでしょう。それもゴールドのカフ・リンクス。それはたしかに「事件」でしょうね。
カステラをうんと上品に食べるなら、なにかお気に入りのカフ・リンクスを嵌めていたいものですね。