久萬とクラヴァット

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久萬という姓があるんだそうですね。もちろん、「くまん」と訓みます。久萬、私は勝手に「無数」の意味かと思っています。たいへんに数が多いので、「久萬」。久萬年も生きられそうで、縁起のいい姓でもあるでしょう。
でも、名前に久萬のつくお方がいます。堀口久萬一。堀口久萬一は、堀口大學のお父さんの名前なんですね。堀口久萬一は、文武両道のお方だったようです。
剣道の先生が、榊原憲吉。柔道の先生が、加納治五郎。加納治五郎は説明の必要がないでしょう。榊原憲吉は、明治はじめに剣術の達人と謳われた人物。つまり考え得る限り、最上の師についていたわけですね。
では、堀口大學はどなたが先生だったのか。マリー・ローランサン。堀口大學はマリー・ローランサンに絵を習ったことがあるらしい。マリー・ローランサンは、堀口大學の七つ年上。
1915年の、マドリッドで、はじめてマリー・ローランサンに会っています。時は第一次大戦中、巴里からスペインに居を移していたので。
まあ、そんなわけで後に堀口大學は、『マリー・ローランサンの扇』と題する詩も創っています。
堀口大學が多くの訳詩もしているのは、言うまでもないでしょう。たとえば、ルイ・アラゴンの詩の中に。

天使は君のネクタイを結んでやか。り
君に微笑することを教へてやる

という一節が出てきます。ネクタイ、フランスなら「クラヴァット」でしょうか。
よく、「天使が結んだようなクラヴァット………」とは申しますが。クラヴァットはその色柄も大切ですが。それ以上に、結び方。まさに「天使が結んだような」。より立体的で、より柔らかく。
思わず「微笑」が湧いてくるような、結び方のクラヴァットを。

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