コレットは、フランスの女流作家ですよね。コレットが１９２２年に発表した『青い麦』は、今もって私の愛読書となっています。
コレットはたしかに小説家なのですが。ひとつ偉大なる発見をもしています。それは、ヘップバーン。オードリー・ヘップバーン。後の女優、オードリー・ヘップバーンを発見したのは、間違いなく、コレットだったのです。それも、まったく偶然のことから。
それは、１９４５年のこと。場所はモンテ・カルロの、「オテル・ド・パリ」。コレットは毎年の夏、「オテル・ド・パリ」で過ごす習慣になっていました。レーニエ国王の招待によって。
ちょうどその時、『モンテ・カルロ・ベイビー』の撮影隊が、「オテル・ド・パリ」に来ていて。つまりコレットと撮影隊との時期が一緒だったわけです。
その頃のコレットは、七十八歳。車椅子で、ホテル内を移動していた。そのコレットの車椅子に、撮影隊のコードが絡まった。
車椅子にコードが絡まったので、撮影は一時中断。撮影隊の責任者は、コレットに謝りに来た。が、コレットの眼はずっと後ろの方で戯れている端役の女の子に注がれていた。その「端役の女の子」こそ、後のヘップバーンだったのです。コレットは、言った。
「見て、私のジジがあそこに居るわ」
コレットが１９４４年に発表した『ジジ』が舞台化されることになって、その主役を探していた時だったのです。もちろんヘップバーンは『ジジ』の女優となって、人気を集めることに。
それ以来、オードリー・ヘップバーンは数多くの男優と共演しています。かのケイリー・グラントもそのひとりであります。
でも、もうひとり忘れてならないのが、ピーター・オトゥール。ヘップバーンと、オトゥールは、１９６６年の映画『おしゃれ泥棒』で共演しています。ウィリアム・ワイラー監督で、サイモン・ダーモットの役を演じています。ヘップバーンの衣裳は、ジヴァンシーが担当。
ピーター・オトゥールの衣裳、まるで自前の服みたいなのです。天然、自然、当たり前。「コステューム」では、ない。体と服とがひとつになっていて。どこにも無理がなくて。
『おしゃれ泥棒』のピーター・オトゥールのような着こなしを、一度してみたいものですが。