辛夷とゴブ・ハット

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辛夷は、可愛い花です。早春に、まるで牡丹雪のように開く花ですね。
辛夷は、「にぎり拳」と関係があるらしい。花弁の表面に、まるでにぎり拳のような凹凸があるからなんだとか。

風なくて 崩るる花の こぶし哉

渡辺水巴の名句にそんなのがあります。水巴は、こんな風に優雅な句を得意とした俳人ですね。
こぶしが出てくる随筆に、『 絵のまよい道』があります。安野光雅の書いたエッセイ集。

「今年の春は早く、もうりんごやこぶしやさくらなどが満開だった。」

これは安野光雅が、ファーブル博物館を再訪した時の様子。安野光雅は絵がお上手で、文章がお上手で、奇想に名人ですから、参ってしまいます。
安野光雅の本業は絵で、当然のことながらロックウエルについても語っています。アメリカの絵師、ノーマン・ロックウエルについて。

「まるで映画を作るように、必要な場面をこしらえて、それを写真に撮るのである。」

安野光雅は、ノーマン・ロックウエルについて、こうも書いています。そして、写実も抽象も、ともに描けた人だと。
ノーマン・ロックウエルが、 1953年『ポスト』8月22日号の表紙に描いた絵に、『ソーダ屋さん』があります。
この「ソーダ屋さん」がかぶっている帽子が、ゴブ・ハット gob hat 。もともとはアメリカの水兵の制帽だったものです。白いピケで、ブリムをぜんぶ上にあげてかぶるのが、特徴。「ゴブ」は、アメリカの俗語で「水兵」の意味。アメリカだけで用いられる言葉なんですね。

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