モリスとモノグラム

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モリスで、英國人でといえば、ウイリアム・モリスでしょうね。ウイリアム・モリスが偉大な藝術家であったのは、言うまでもありません。が、今、ウイリアム・モリスを語るのは、難しい。詩人であり作家であり、室内装飾家であり、テキスタイル・デザイナーであり…………。あまりにその活動範囲が広すぎて。ただし、ウイリアム・モリスはそれぞれの分野で、最上の質を追求したことでも、他に例を探せないことでしょう。
ウイリアム・モリスを語る上で忘れてならないのが、「ケルムスコット・プレス」。1870年頃からモリスは、美しい活字、美しい本に夢中になるのです。その理想のための夢工場が、「ケルムスコット・プレス」だったのです。
モリスは1871年5月17日に、友人宛の手紙にこんな風に書いています。

「エリザベス朝の石造りの古い家、それになんとすばらしい庭! 川が間近で、舟小屋やら何やらがすぐに使える…………。」

これが後に「ケルムスコット・プレス」となってゆくのですね。
1872年10月16日に完成した「本」に、『ルバイヤート』があります。モリスが紙を創り、絵を創り、文字を創った「本」。この世でもっとも美しい本と、呼びたいほどです。今は、「英国図書館」所蔵となっています。
モリスが出てくるミステリに、『哲学教授を辞めて探偵になった男』があります。1999年に、ジョサイア・トンプソンが発表した物語。

「モリスをサッター・ストリートのホテルに送り、急いでユニオン・ストリートに戻った。」

モリスはモリスでも、事件の関係者。場所は、サンフランシスコ。探偵の名前は、ジョサイア・トンプソン。トンプソンはハーヴァード大学の教授から探偵になった異色の人物。この半ば事実でもある物語に。

「ブルーのシャツのカフスはモノグラム入りで…………。」

これは探偵事務所の、パラディーノという人物の着こなし。たぶん、カフにモノグラムを刺繍しているのでしょう。
ほんとうは、ふだん見えない胸のあたりに入れるのが、上品ではありますが。まあ、誰もがウイリアム・モリスのように優雅ではありませんからね。

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