茶漬けと蝶ネクタイ

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茶漬けは、美味しいものですね。一杯飲んで、いい気持になって。さいごに茶漬ひと口頂くのは、無上の歓びであります。
「ごりの茶漬け」ということを、北大路魯山人が書いています。むかし『星岡』という食通雑誌があって、その中に「贅沢茶漬け」のあれこれが紹介されています。
ごりはハゼに似た小魚で、戦前の京都では珍しくはなかったらしい。魯山人は京都のお生まれですから、ごりをご存じだったのでしょうね。
ごりで、まず佃煮を作る。そのごりの佃煮をば、飯の上に十尾ほど並べまして、茶漬けに。これはなんとも美味いものだと、魯山人は言っております。
戦前の茶漬けというなら、「新橋茶漬け」というのがあったそうですね。これは吉田健一著の『私の食物誌』に出ている話なのですが。
吉田健一のいう「新橋茶漬け」は、鮪の海苔茶漬け。そのむかし、新橋のとある店で食べさせたので、「新橋茶漬け」。新橋茶漬けのなにが美味かったのか。白胡麻の風味が。飯の上に鮪を乗せる時、白胡麻を振る。この白胡麻の薫りが美味かったと、吉田健一は例の名調子で語っています。
『私の食物誌』も食通随筆なのですが、なぜかイアン・フレミングの話も出てくる。イアン・フレミングは巨万の富を築いた瞬間、美味いものが消えてしまった、と。うーん、そんなものなのでしょうか。
イアン・フレミングは、終生、蝶ネクタイを好んだお方。それも、濃紺の、白い、ピン・ドットのボウ・タイのみを偏愛。
濃紺の、白い、ピン・ドットこそ古典だと、考えたいたものと思われます。
なにか好みの蝶ネクタイで、美味しい茶漬けにありつきたいものですが。

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