アタラと赤い靴下

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アタラは、美しい女の人の名前ですよね。シャトオブリアンの代表作、『アタラ』の主人公。

「名前をアタラといい、この隊の戦士の頭で金の腕輪をはめているシマガンの娘です。」

『アタラ』の中に、そのように出てきます。『アタラ』は1801年に、シャトオブリアンが発表した物語。
フランソワ・エルネスト・シャトオブリアンは、フランスの政治家。政治的の一方で作家でもあったお方。というよりも、ステーキのシャトオブリアンでも、有名でしょう。ある時、シャトオブリアン家の料理人が、極上肉を網で焼いて出したら、次の日から、そればかり……………………。で、「シャトオブリアン」の名前がついたんだとか。
昭和十三年に、シャトオブリアンを食べたのが、古川ロッパ。

「オルドヴルの豪華版、本場のヴイアベーズ、シャトブリアンとアティショーの煮たのと菓子。」

昭和十三年五月六日 金曜日の『日記』にそのように出ています。これは神戸港の、客船の食堂での話なんですね。
いや、そうではなくて、アタラに戻りましょう。スタンダールが1829年に発表して『ローマ散歩』にもアタラの話が出てきます。

「ルーブル美術館で、亡きジロデ氏の『墓に運ばれるアタラ』を見られたし。」

画家、ジロデはシャトオブリアンの『アタラ』を読んで、感動。そして『墓に運ばれるアタラ』に絵筆を採ったものです。
スタンダールの『ローマ散歩』には、こんな描写もあります。

「枢機卿たちはロッシーニの『理髪師』のなかのバルトロの衣裳に近いものを着ている。黒い服に赤い縁飾りと赤い靴下を着けている。」

スタンダールは1828年頃、ローマで何人かの枢機卿に会って。枢機卿の服装をそんな風に書いています。
ああ、赤い靴下。いいですね。絹の赤い靴下。
時には、赤い靴下で。現代のアタラを探しに行くといたしましょうか。

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