富豪とモヘア

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富豪といって思い出すお方に、ハワード・ヒューズがいますよね。ハワード・ヒューズは1905年、テキサスの生まれ。

十八歳の時、父の死にともなって、天文学的数字の遺産を。で、どうしたか。十八歳のハワードは、ヨーロッパ各地を旅することに。

そのハワード・ヒューズがドイツ、ブリュッセルで興味を持ったのが、カジノ。カジノの、ルーレット。毎晩、ルーレットの勝負を飽きず眺める。で、ある夜、そのルーレットに五ドル賭ける。赤に五ドル。赤で勝って、十ドル。十ドルを、黒に。黒で勝って、二十ドル。二十ドルを、赤に……。これを繰り返して、とうとう一万ドルに。まわりの人々が勝負を止めて、ハワードを取り巻いたことは言うまでもないでしょう。

さて、勝った一万ドルをどうするか。ハワード・ヒューズは、十ドルを赤に賭ける。と、ルーレットは回って、黒に。ハワード・ヒューズは9,990ドルを持って宿に帰ったという。

若き日のハワード・ヒューズが情熱を燃やしたのが、映画作りと、飛行機競争。ハワード・ヒューズはいくつもの飛行機での新記録を作ってもいます。
たとえば、1937年にもロサンジェルスからニューアークまで、飛行機で。7時間28分25秒の新記録を樹立。

その1937年に発表された物語に、『ナイルに死す』があります。もちろん、アガサ・クリスティ。これは、『ナイル殺人事件』として映画化もされていますから、よく知られているでしょう。
この『ナイルに死す』が出てくるミステリに、『レベッカの鍵』が。ケン・フォレットが、1980年に発表した小説。

「ビリーは新しい本を持ってベッドに入った。(中略) 本の題名は『ナイルに死す』というのであった。」

ビリーは、英軍情報部、ウイリアム・ヴァンダムの息子という設定。また、こんな描写も。

「パッカードからは、モヘアのスーツを着た若いギリシア人が降りてきた。」

モヘア mohair は、アンゴラ山羊の繊維で織った生地。薄く、張りがあり、光沢の美しい素材。仔山羊の繊維を使っての布地はとくに、「キッド・モヘア」と呼ばれます。

さて、モヘアのスーツを着て。せめて気分は富豪のつもりで……。

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