シチューとシルク

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シチューはまあ、煮込みですよね。ビーフ・シチューなら、牛肉の煮込み。ただし、牛肉以外にも野菜や、香草などをあれこれ加えることで、コクと味わいとが深められるのでしょう。
牛タンのシチューがお好きだったお方に、石津謙介先生がいます。もっともこの場合には、もっぱらおつくりになるほう。日曜日になると、白金のとある店に出向いて。気にいった牛タンを買ってくる。そこからとろりと煮込んで、「さあ、どうだ?」。たぶん、食べさせるのが、お好きだったのでしょうね。

「新たに運び出した七面鳥のスチュウと豚の油で煮つけたトマトオは人の鼻を撲つうまそうな香いを放って黒麦酒の空瓶は…………………。」

内田魯庵が、明治三十一年に発表した『くれの廿八日』にも、そのように出ています。いいですね、ターキーのシチュー。

ピーター・メイルが、1996年に書いた『南仏のトリュッフをめぐる大冒険』にも。

「次の料理は、ワインをたっぷりきかせた、とろりと濃いビーフ・シチューだった。ベーコンに玉葱、人参、ハーブ、オリーヴをあしらってよく煮込んだ熱いシチューは、匂いを嗅ぐだけで気分が豊かになった。」

まったくもって、その通りですね。『南仏のトリュフをめぐる大冒険』には、こんな描写も出てきます。

「乾いて固まったクリームのような色相の厚手の絹のシャツに黒いカシミヤのカーディガンを……………………。」

これは主人公の友だちの、英国人、ジュリアン・ポオの着こなし。いいなあ、シルクのシャツも。
シルクのシャツで、美味しいシチューを食べに行くとしましょうか。

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