スピレインで、ハードボイルドでといえば、ミッキー・スピレインでしょうね。アメリカ、ニューヨークの生まれ。1947年の第一作が、『裁くのは俺だ』。これが拍手喝采となって、以後、書きに書きまくったハードボイルド作家であります。
今も出ている「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」がありますね。新書版で、透明ビニールのカバーが掛かってシリーズ。あの記念すべき第一号が、ミッキー・スピレインなのです。1953年のこと。スピレインの『大いなる殺人』。これが、「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の、「101」。一冊、150円也。
これ以降、ハメットの『赤い収穫』、ウールリッチの『黒衣の花嫁』と続くわけです。
ところでアメリカのミステリ作家で忘れてならない存在に、エラリー・クイーンがいます。江戸川乱歩は、このエラリー・クイーンと文通していたという。エラリー・クイーンのひとりである、フレデリック・ダネイと。
フレデリック・ダネイの趣味が、ミステリ本の蒐集。ミステリ本の蒐集では、おそらくフレデリック・ダネイが第一人者であったでしょう。その中でも、とくに貴重だったのが、『月長石』。ウイルキー・コリンズが、1868年に発表したミステリの古典。
フレデリック・ダネイは、1943年に、2,250ドルで買ったんだとか。なぜ、それほど貴重なのか。これはコリンズ自身の署名が入っているから。
チャールズ・ディケンズが、アメリカに来た時、コリンズはディケンズに会って、『月長石』を献呈。その折の署名が。
エラリー・クイーンが1949年に発表した短篇が、『アフリカ旅行家』。その第一行は。
「スコッチ織の服を無造作に着こなしたエラリー・クイーンは大学の豪華な象牙の塔の八階の廊下を……………………。」
ここから物語がはじまるのですね。
「スコッチ織」が、今のトゥイードであるのは、言うまでもありません。この時のエラリー・クイーンはトゥイードに服を着ていたわけです。
さて私も、トゥイードを着て、スピレインの初版本を探しに行くとしましょうか。