堀とポロ・シャツ

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堀で、小説家でといえば、堀 辰雄でしょうね。堀 辰雄の代表作は、『風立ちぬ』でしょうか。繊細な、彫刻刀で彫ったような文章を書いたお方です。
堀 辰雄は少しばかり将棋を指した。しばしばその相手をしたのが、井伏鱒二。もっとも戦前には、素人将棋が流行ったらしいのですが。
ある時、井伏鱒二が荻窪の店で一杯やっていると、見知らぬ客と居合わせて。
「堀 辰雄の将棋の腕はどうだった?」と、くどくきかれて閉口した、と書いています。『堀 辰雄と将棋の香車』と題して。昭和二十八年『文藝』八月号に。
ある時、井伏鱒二は皆で、菅平高原へ。冬のことで、スキーに。上野駅から列車に揺られて。一行のなかのひとり、池谷信三郎が上野駅の売店で、折り畳み式の、簡便な将棋を買った。車内で、池谷信三郎と井伏鱒二が、将棋を指す。堀 辰雄は隣の席で、本を読んでいる。
ふたりが将棋を指しているうち、駒にひとつ香車がなくなって。車掌が出てきた探してくれる。それでも、見つからない。その時、堀 辰雄が呟いた。
「むかしフランスの小説を読んでいたら、無くしたチェスの駒が、ズボンの折返しから出てきた話があったぞ。」
で、探してみると、佐々木茂索のズボンから、発見。みんな折返しのあるズボンを穿いていたわけですね。
堀 辰雄の短篇に、『晩夏』があります。1941年の発表。この中に。

「先にはいって来たのは、半ズボンに白いポロシャツという服装で、頭も男の子のように刈り上げた……………………。」

これは避暑地のホテルの食堂での話。外国人の女性の姿。堀 辰雄は「ポロシャツ」をすでに識ってはいた、ということになるのですが。仮に、自分では着なくても。
なにか好みのポロ・シャツで、堀 辰雄の初版本を探しに行きたくなってしまいますね。

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