団子とダックス・カラー

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

団子は、時に食べたくなるものですよね。ひと口に、団子といいましても。まさか星の数ほどはないでしょうが。
たとえば、笹団子。みたらし団子。羽二重団子。きび団子をもらったのは、桃太郎でしたね。
団子がお好きだったお方に、泉 鏡花がいます。なぜなら、短篇の中にえんえんと団子の話を書いているのですから。それは、鏡花が明治四十三年一月に発表した『松の葉』です。

「團子が貰ひね、」

これが『松の葉』の第一行であります。場所は、根岸の、相坂の団子屋と、書いています。この団子屋は名代で、十銭、十五銭、二十銭の別があったという。屋台の団子屋で、客の注文を聞いてから、作る。しばし時間がかかる。
物語の主人公は、近くで湯豆腐を食べたばかり。ということは、今もある「笹の雪」でしょう。
大正五年十一月二十七日。久保田万太郎は、水上瀧太郎とともに、鏡花の自宅を訪ねています。水上瀧太郎は、初対面。鏡花のお辞儀の仕方は一種独特だったと、書いているのです。
鏡花は、五本の指を丸めて、手の甲で畳に添える。これは掌を畳につけるとバイキンがつくと信じていたためです。鏡花の潔癖症は、有名ではありますが。
団子を無理矢理、英語にしますと、「ダンプリング」でしょうか。ダンプリングが出てくる小説に、『ダーバヴィル家のテス』があります。もちろん、トーマス・ハーディの代表作。

「他のどの娘の手よりもテスの手が好きな、蒸団子と古美人がまじっていた。」

「蒸団子」の脇に、「ダンプリング」のルビが振ってあります。ハーディの『ダーバヴィル家のテス』には、こんな描写も。

「白のクラヴァット、立て襟のカラー、褐色の乗馬用手袋…………………。」

これはおそらく、「ダックス・カラー」のことかと。ウイング・カラー以前の、立襟のこと。
時にはダックス・カラーのシャツで、美味しい団子を探しに行きたいものですね。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone