ブランコとブレイザー

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ブランコには、懐かしい響きがありますよね。幼稚園や小学校の校庭にはたいてい、ブランコがあって。誰かがブランコに乗っていると、なぜか自分でもやってみたくなったものです。
ブランコを絵にすると、どうなるのか。その良い例が、フナゴナールの描く『ブランコ』でしょう。1768年頃に描かれた名画。貴婦人が優雅な衣裳で、ゆっくりブランコを揺らしている様子が描かれています。
ということは、十八世紀のフランスではブランコが流行していたのでしょうね。「バランソワール」。フランスではブランコのことを、「バランソワール」というんだそうですが。
むかしの日本語では、「鞦韆」。また、「ふらここ」とも。美しい日本語のひとつだと思います。それに、「しゅうせん」は、「繍扇」にもつながりますし。「繍扇」は縫取りのある扇のことですね。
『ブランコ』と題する短篇を書いたのが、ロシアの作家、イワン・ブーニン。1945年の作。

「並木道のはずれにあるブランコに向かい合って立ち、輪を軋ませ、彼女の裾をはためかせる風にあおられながら…………。」

なんだかフラゴナールの『ブランコ』のロシア版みたいですが。イワン・ブーニンはまた、1940年に、『名刺』という短篇をも発表しています。

「高価な堅牢な靴、黒いウールのコート、イギリス製のチェックのハンチングという服装の彼は…………」。

「彼」は、客船「ゴンチャロフ号」の、二等船客という設定。
朝食は、ウオトカとキャヴィア。いいですねえ。羨ましいかぎりです。
ところで、ブランコが出てくるミステリに、『バルコニーの男』があります。1967年に、スゥエーデンの作家、マイ・シューヴァルと、ペール・ヴァールーとの共著による物語。

「四人で公園のブランコに乗ったこと、おぼえている?」

これは、オスカルソン夫人の娘に対する言葉。また、『バルコニーの男』には、こんな描写も出てきます。

「男のほうはしゃれたブレザーに薄ネズミ色のズボンといういでたちだった。」

これは公園を散歩している男の着こなし。ライト・グレイのトラウザーズということは、ダーク・ブルーのブレイザー だったのでしょうか。
紺のブレイザー で、ブランコ。ときにはいいかも知れませんね。

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