スラングとスモーキング

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スラングは、仲間言葉のことですよね。ある特別の仲間だけに通じて、それ以外の人には通じない言葉。時と場合によって、「隠語」とも。隠された言語なのでしょうか。
鮨屋での、「ゲソ」。これも以前は仲間言葉だったものでしょう。でも、今はむしろ客のほうが多く、「ゲソ!」。これではあんまり「隠語」としては機能しないのかも知れませんが。
ひとつの社会があれば、必ずそこにはスラングがあります。たとえば、1920年代、英國の、やや下流階級での、スラング。
それこそスラングとしての、「スラング」s l ang 。これはなにか商売をするときの許可証。「鑑札」のことを、「スラング」と、言ったんだそうです。
「ジー」 g e e は、「サクラ」のこと。まわりの客がなんだか買いたくなるような口上を並べておいて、さっと消える客の振りした仲間。
これを、「ジー」。
どうして私ごときが、1920年代倫敦のスラングを知っているのか。ジョージ・オーウエルの『パリ・ロンドン放浪記』に出ているからです。
ジョージ・オーウエルは、「ジー」の隠語について、もともとは古い狩猟言葉から来ているのでは、と推測しています。昔、ハンティングで、馬を隠しておくことを、「ジー」と言ったらしいのです。
とにかく1920年代の、スラングに詳しくなるには、『パリ・ロンドン放浪記』を読むに限ります。ジョージ・オーウエルは実際に、何年も放浪生活を続けて、やっと『パリ・ロンドン放浪記』を書きあげたのですから。
ジョージ・オーウエルが、『パリ・ロンドン放浪記』を仕上げたのは、1930年のこと。それがやっと出版されたのが、1933年のこと。いくつかの出版社に断られたために。
ところが、出版やいなや、大好評。結局、ジョージ・オーウエルの出世作となったのであります。
『パリ・ロンドン放浪記』に、こんな描写が出てきます。

「スモーキング をりゅうと着こなし、髪はアメリカ風にカットした十八歳のじつにスマートな若者にばったり会ったのです。」

これは巴里だから、「スモーキング 」。イギリスでいうところの、ディナー・ジャケットであります。
イートン校で学んだジョージ・オーウエルとしては、最初、フランス語がまるでスラングのようにも聞こえたことでしょうね。

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