パステルとパンタロン・ルージュ

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パステルは、画材ですよね。木炭でないパステル。鉛筆でないパステル。水彩でないパステル。
また、「パステル・カラー」のように、パステルから醸し出される雰囲気を指しても用いられることがあるようです。
たとえば、芥川龍之介の訳詩に、『パステルの龍』があります。大正十一年に発表された文章。『パステルの龍』の中に、「洒落者」の章があって。

「彼は緑の絹の服を着ながら、さもえらさうに歩いてゐろ。彼の二枚の上着には、毛皮の縁がとつてある。彼の天鵞絨靴の上には………………」。

ヴェルヴェット・シューズ、履いてみたいものですが。

「彼が、晩年、パステルを用ひて、光り輝く異様な色彩を發明するに到つた時、これは既に新しい動きをえてゐた彼の線から溢れ出たものであつた。」

小林秀雄著『近代繪畫』の一節。「彼」がドガであるのは言うまでもないでしょう。
ドガは、ゴンクール兄弟とも親交があったらしく、『ゴンクールの日記』にも、よくドガの話が出てきます。

「ドガが、今晩ある家というか館というかを辞して外に出たとき、世のなかにはもうなだらかななで肩が見られやしないと嘆いていた。まったく彼の言い分はもっともである。あれは貴族社会のしるしであって、女性の新しい時代からは消えてなくなりつつあるのだ。」

1878年5月14日:火曜日の『日記』にそのように出ています。
『ゴンクールの日記』は、興味深いものです。

「そのファンファーレのなか、宮殿に向かう赤ズボンの上番守備兵が通る。」

これは1857年4月3日の日記。
この日、ゴンクールはナポリを旅していて。「カフェ・ド・ルゥロープ」で、ココアを飲んでいます。そこにナポリの兵隊が歩いて来て。
パンタロン・ルージュ。いいですねえ。側章は黒にしましょうか。

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